ドクターヘリ 広い本県にこそ導入を!
★論説★ ドクターヘリ 広い本県にこそ導入を
2007.08.21 岩手日報朝刊
四国四県に匹敵する広い県土を持つ本県で「空飛ぶ救命室」と呼ばれるドクターヘリの導入について論議が高まらないのはなぜだろう。
ヘリコプターの維持に費用がかかる、ヘリポート整備をどうするか、医師ら専門スタッフの確保が難しい―など課題は多い。
しかし、何より優先されなければならないのは人の命だ。山間部が多い本県こそ救急処置を施し、迅速に搬送できるドクターヘリが必要ではないか。
厚生労働省は患者の救命率向上を狙いに二〇〇一年に各地の救命救急センターがドクターヘリを配備する際、年間経費として約一億七千万円を国と都道府県で半分ずつ補助する事業を始めた。
これを法制化したのが今年六月に成立した特別措置法。〇一年の事業開始当初は五年間で全国に三十機のヘリを導入する計画だった。
現在は十道県の十一機だけ。東北では来年、福島県立医大病院に初めて配備される。
積極姿勢示す八戸市
八戸市は八戸市民病院を拠点とするドクターヘリの導入に積極的に取り組んでいる。
二戸、久慈の両市など岩手県北地域と八戸市を中心とする青森県南地域の総合出先機関などで構成する三圏域連携懇談会(座長・小林眞八戸市長)が提案した。
同病院は大型の救命救急センターを持ち、救急専用の集中治療室に三十床を備える。
ヘリポートは隣接する県の河川防災ステーションにある。六月にはデモフライトを実施し、緊急時のドクターヘリの役割と有効さを市民にアピールした。
さらに日を置いて、実際にヘリコプターを使った患者輸送のシミュレーションも行った。
救急患者の発生からヘリへの移送、病院までの搬送と一連の流れを医師らが確認した。
臨時ヘリポートとして使用された病院隣接地は、サッカー場の半分程度の何の変哲もない広場。
ヘリがエンジンをかけてから飛び立つまでに約三分。小型の専用機だったためか立派に整備された場所でなくともヘリの離着陸が可能な印象を受けた。
青森県は「救急・災害医療対策協議会」を設置してドクターヘリ導入を本格的に検討する。
県北エリアが三圏域連携懇談会に参加している本県にすれば県境を越えてドクターヘリを活用しようとの計画になにかしらのリアクションがあってもいい。
救命率向上の切り札
世界で最も早くヘリコプターによる救急体制を構築したのはドイツ。一九七〇年にスタートした。
全国を半径50キロの円で埋め、各中心部の拠点病院にヘリの基地を設けた。
七三年に開始したスイスは山岳地帯が多いにもかかわらず、国内ほとんど全域に医師が十五分以内に到着できる体制を整えている。
英国は住民、企業の寄付金による運営形態を取っている。
財政難を理由にドクターヘリ導入に二の足を踏んでいる自治体は多い。
背景には患者の搬送だけなら防災ヘリを活用できるとの考えがあるようだ
。防災ヘリは比較的機体が大きく、騒音や離着陸地点の確保、離着陸までの時間など、専門の医療機器を装備したドクターヘリとは基本的に性格が違う。
年間約一億七千万円以上といわれる運営経費のうち国が半分負担すれば県の費用は八千万円強。
特別措置法は財源確保のため、民間からの寄付も生かせるとしている。
ドクターヘリの運航範囲は半径100キロ圏内なら三十分以内とされる。いわば救命率アップの切り札だ。人命に地域格差があってはならない。
(小田島康隆)
岩手日報社