2007.07.26

<2007参院選 争点の現場から>2*医療福祉*実効性ある政策急務 2007.07.25 北海道新聞

<2007参院選 争点の現場から>2*医療福祉*実効性ある政策急務
2007.07.25 北海道新聞

 大雪山国立公園の豊かな自然に包まれた温泉街、上士幌町糠平地区。人口百三十人。年間十万人の観光客が訪れるこの地区で、内縁の夫と二人で民宿を切り盛りする女性(71)は、C型肝炎治療のため、往復一時間をかけて同町市街地の民間病院に通っている。今年三月、地区唯一の医療機関だった道立糠平診療所が閉鎖されたからだ。

 女性は同診療所の週一回の診察日に毎回、通院していた。しかし閉鎖後、民間病院への通院は月二回に減らした。診察時間と合わせると半日がつぶれ、仕事にならないからだ。体調はすぐれない。「本当に困っています」。女性のため息は深い。

 管内のへき地では近年、住民の健康を守る診療所が次々と廃止されている。二○○五年三月には大樹町の道立生花診療所が閉鎖。新得町屈足地区唯一の民間診療所も九月末に院長の引退が決まっているため、存続が危ぶまれている。医師の偏在による医療の地域格差は広がるばかりだ。

*努力にも限界

 何とか医師に来てもらおうと、各自治体は頭を悩ませる。昨年度、医師四人のうち三人が自己都合で退職した士幌町国保病院は、医師募集の際、報酬を管内の自治体病院で二番目に高く設定して三人を確保した。同じく昨年度、町立国保診療所を廃止した音更町は、残された建物と土地を無償提供することによって開業医を確保した。

 しかし、士幌町の小林康雄町長は「自助努力にも限界がある。医師確保には国や道が責任を持ってほしい」と話す。五月に東京で開かれた自民党の緊急医師不足対策特命委員会では、医師や看護師確保が難しい管内の現状を伝え「医師・看護師の配置基準緩和や、人員確保の仕組みづくりを」と訴えた。こうした声を受け、道も六月、地域医療を担う医大生対象の奨学金制度創設や、医師の道職員採用に乗り出した。

 ただ、今回の参院選で各党は地域医療の充実を公約に盛り込んでいるものの、財源まで踏み込んだものは少なく、実現性は不透明だ。

*家庭医を育成

 上士幌町市街地にある「はげあん診療所」。裏手には医師の安藤御史(みふみ)さん(65)が管理する畑が広がる。帯広協立病院院長を四年間勤めた後、一九九九年に同診療所を開いた。夜に急患が来ることもあるが、「半医半農生活が気に入っている」という。

 安藤さんは「国の最も重要な役割は教育、福祉、医療を守ること。特に命にかかわる医療関連予算はもっと増やしていいはずなのに、国は経済の論理を優先させている」と批判。地方の医師不足については「医療が専門化して幅広い症状を見られる医師が少ないのが一因。もっと家庭医の育成に力を入れるべきだ」と指摘する。

 地域医療に貢献する医師をどのように増やし、いかに全国各地に定着させていくか。高齢化が進む中、実効性のある仕組みづくりが急務だ。

(西田美樹)

【写真説明】上士幌のはげあん診療所で診察する安藤さん。「医療関連予算をもっと増やすべきだ」と強調する