国の財政支援に頼らず 民間資金を活用した全国配備を進める仕組みの構築
『ドクターヘリ法成立でも国の財政支援が強化されたわけではない。
民間資金の積極活用が目玉である。自動車や保険などさまざまな業界から寄付を募り、それを使って全国配備を進める仕組みを設けた。』
【社説】ドクターヘリ法 安全網を広げていきたい
2007.07.05西日本新聞
「空飛ぶ救命室」とも呼ばれるドクターヘリの全国配備を目指す特別措置法が今国会で成立した。
ドクターヘリは救急医療に必要な機器や医薬品を備え、救急医療の専門医が乗り込んで、機内で必要な治療を行いながら、速やかに医療機関に搬送する。
事件・事故や災害にあって生命に危険がある場合などに、消防機関の要請で出動する。大けがをした人や重病人を一刻も早く収容し、治療することで救命率を上げ、後遺症を軽減することを狙う。
欧米を見習って六年前に厚生労働省がドクターヘリ導入促進事業を始めた。当初、全国で三十機の配備をもくろんだ。半径七十キロ圏(二十分程度)を一機の活動範囲とすると、全国を網羅するには三十機程度必要と機械的に算出した。
だが、現状は福岡、長崎など一道九県で計十一機が導入されたにすぎない。
福岡県では、久留米市にある久留米大学病院を事業主体にして二〇〇二年二月に活動を始めた。活動範囲も当初の福岡県内に翌年九月に佐賀県内が加わり、いまは大分県西部に及ぶ。出動要請件数も増え続け、年間四百件を超えたという。
一方、長崎県では、県が事業主体となり、県内唯一の救命救急センターがある「国立病院機構長崎医療センター」(大村市)から医師らの協力を得るかたちにして昨年十二月から動きだしている。
長崎県によると、長崎医療センターに救急車で搬送された約二千二百人(二〇〇四年)のうち、搬送時間が四十分以上を要した人が約一割あり、その結果、助からなかったり、重い後遺症を残すケースが起きていたという。
高度医療を担う病院施設が少ない地方ほど、万が一に備えたドクターヘリの需要は高いはずだ。だが、現実には千葉、神奈川、愛知など大都市圏が中心だ。
都道府県と国は、ドクターヘリの事業主体に対して、年間八千五百万円ずつの計一億七千万円程度の補助金を出す制度になっている。
財政力の弱い県では、その負担感は大きく、導入に二の足を踏むことになる。それでは医療の地域間格差が広がる。是正策が必要だ。超党派の議員立法で今回の特別措置法が出てきた理由である。
今回の法律で国の財政支援が強化されたわけではない。民間資金の積極活用が目玉である。自動車や保険などさまざまな業界から寄付を募り、それを使って全国配備を進める仕組みを設けた。
九州には離島や中山間地なども多い。人命を救う安全網としてドクターヘリの配備が進むことは歓迎したい。
ただ、夜間は飛ばないなどドクターヘリにも制約がある。救命活動も行う消防防災ヘリなどとの活用にもっと知恵を出してもよさそうだ。もう一つ言えば、大規模災害・事故を想定し、県を越えて九州全体でドクターヘリの導入や運用を考えていくことも必要だろう。