2007.04.11

公立新小浜病院(旧国立小浜病院)

【参考記事】

■自治体病院を民間(特定医療法人)に管理委託のモデルケース “公立新小浜病院”  長 隆
医学書院「病院」2004年2月号p145からp147掲載


 雲仙普賢岳の懐に抱かれる風光明眉な海辺にある湯の郷ー小浜。ここに平成12年度末まで引受機関が出てこなければ廃院の予定であった国立病院から新たに生まれ変わった公立新小浜病院がある。
平成15年、地方自治法の改正により特定医療法人が管理者に指定されることが可能になったが、(ここに紹介する)公立新小浜病院は法成立に先駆けたケースとして、自治体と医療法人双方にとって貴重な情報となろう。
 廃院が決められた国立病院の中でも特異な再生を遂げ、尚且つ従来では考えられなかった素晴らしい改革発展が進められている。
 その中心となり現在もさらなる画期的な振興策を指導している松藤壽和・小浜町長の手法をここに紹介する。ほとんどの自治体病院が地方公営企業法を「全適」を採用しても赤字体質を改善できなかったのはなぜか。
 実質的な地方財政の枠組みの中に存在する以上、職員意識における給与ベースは一般 会計と同一であるのが当然で、経営を自治体から分離しない限りどんなに赤字でも病院は潰れない。この意識を引きずったまま経営を引き受けることはできないというのが、松藤町長の強い信念であった。
1.小浜地区保健環境組合を病院開設できるよう改変
1.7町が協力して小浜地区保健環境組合(一部事務組合)を改組
平成9年8月、九州医務局における研修を契機にして平成12年度末までに国立小浜病院の廃止を含む対処方策を決めることが迫られた。この中で病床過剰地域となっている当地では新規に病院を設立することは不可能であり、国立病院を再建する以外の選択肢は考えられない状況にあった。そこで、七町(千々石町、小浜町、南串山町、加津佐町、口之津町、南有馬町、北有馬町)が協力し合い、平成10年度地域保健推進特別 事業(国庫補助金12,917,000円)を活用して島原半島西部地域保健医療体制整備検討委員会を発足させた。同委員会は8回の会議と鹿児島県、静岡県の3国立病院に視察研修を重ねた結果 、一部事務組合を設立し、国立病院の移譲を受けて組合立の公立病院として開設し、普通 交付税を投入して3年間で病院運営を黒字化するという調査報告書をコンサルタントの協力を得て作成した。
  こうして、平成11年に小浜町長である松藤管理者を病院開設主体のリーダーとする“小浜地区保健環境組合”に病院経営が出来るよう改組が整った。

2.小浜地区保健環境組合が病院を開設
 平成12年9月に長崎県が小浜地区保健環境組合の規約変更を認可することで同組合は、病院開設者となれることが法律的にも認められた。
 平成13年1月に同組合は、議員全員で国立小浜病院の譲渡要請書を九州厚生局及び長崎県知事並びに長崎県議会に提出すると同時に、組合母体である7町長で厚生労働省と地元国会議員への陳情を実行した。
 松藤小浜町長等の精力的な活動の結果、わずかに1年足らずの期間を経た平成14年2月に「国立病院等の再編成に伴う特別 措置に関する法律」(昭和62年10月17公布・施行、平成8年5月22日一部改正)に基づいて国立小浜病院の経営移譲に関する基本協定・譲渡契約が締結され、公立新小浜病院が平成14年3月1日開設されるに至った。
 ここでの重要なポイントは開設者から管理委託を受ける受託者をどのように選定するかにあった。そのため、松藤町長はまず受託を希望する機関を募り、その結果 、4つの機関が立候補した。この4つの機関に対し病院経営上の赤字補填はしない又職員は公務員でなく、病院が経営する法人の職員にする等の条件を附し、管理委託条件を提示し説明を行った点である。

2.病院管理受託者として特定医療法人の承認を条件に医療法人三佼会を選定
a.病院管理受託者の選考過程
 それでは、どのような経過をたどって管理受託者は決められたか。平成11年5月に7町長会は長崎県との協議を経て病院管理受託者を選定する作業に着手し、「国立小浜病院の移譲に伴う管理委託条件」を提示し、受託者を募り、ヒアリングを実施した。これには医療法人宮崎病院、南来郡医師会、その他2病院が立候補した。南高来郡医師会は8月のヒアリング後2カ月を経た10月5日に医師会長名による正式な通 知文をもって、辞退を表明した。
 そして、3病院を対象に20日後の同年10月25日、7町長会にて無記名投票 が行われ、病院管理受託者として医療法人三佼会宮崎病院に内定した。その際、特定医療法人に組織変更することを条件とされた。

b.医療法人三佼会が公益法人である特定医療法人の承認を取得
 病床数102床の宮崎病院が受託者となれたのは医療法人を特定医療法人化(公 的開設主体)へ組織変更を達成したことにある。
 医療法人宮崎病院は地方自治法第244条にそって公共的団体としての組織変更を実現する目的で、平成11年11月26日に租税特別 措置法の特定医療法人の承認申請を旧大蔵省に提出した。同申請は通 常9月から事前審査がスタートして、翌年2月に内定し、3月の年度末に承認されることによって当該事業年度から特定医療法人の認可を取得するものであるが、三佼会の申請が11月末近くということで平成12年3月末の認可には間に合わない事態が予測され、事実当年度の承認は得られなかった。
 しかし、平成12年度に国立小浜病院の移譲に伴う管理受託者となる為には一日も早く特定医療法人の認可取得が求められた。そこで松藤町長は財務省へ足を運び熱心に説明することによって、異例とも言える平成12年6月の特定医療法人承認申請が認可されることになったのである。

3.小浜式手法による施設整備
a.病院の敷地と建物の増改築及び最新医療機器等の設備投資
 公立新小浜病院は「国立病院の再編成に伴う特別措置に関する法律」の特例譲渡を適用されることにより9割引の譲渡価格によって小浜地区保健環境組合に移譲された。
 そして、移譲前の診療科目を見直して脳神経外科、循環器内科、心臓血管外科、総合リハビリテーションに重きを置く、現在の診療体制を整備した。国は移譲前に3億円の範囲内で建物を改修し、合わせて組合の方で同時期にMRI等医療機器の更新を実行してから病院を開設した。また、移譲後5年間は国の補助の範囲内(赤字の55%負担)において赤字補填を行うことが約束されている。なお、国からの譲渡価格は1市16町村で負担することにより、組合を構成する7ヶ町の負担を軽減している。
 小浜地区保健環境組合は病院事業に対して、小浜町一般会計から負担金として普通 交付税の全額と救急告示病院分の特別交付税を七町から負担金として支出することにより、診療報酬と合わせて収入を得ており、病院管理受託者である特定医療法人三佼会には人件費相当額の診療交付金と管理運営委託料を支払っている。

b.医療者の人材確保と育成の為の環境整備
 最後に特記すべきは、医療事業の根幹をなす、医療者の人材確保と育成の為に管理者(小浜町長)が提案し、実行している医療従事者の為の環境整備に関する画期的な諸施策である。
 公立新小浜病院は港を見下ろす高台に位置していることで眺望が素晴らしい環境を利用して、オーシャンビュータイプの天然温泉浴場を完備している。これは患者用ではなく病院で働く医師・看護師等職員が現場での疲れをいやし、健康管理に役立てる為の施設である。
 更に都市部から遠く離れた小浜地区の立地条件を克服して、より多くの有能な医師・看護師・職員が当院に進んで就職できるように医師宿舎と看護師宿舎の建築を進めている。すでに医師宿舎は完成、入居しており、交付税を投入することによって入居者の賃料負担を周辺賃貸物件に比べ、三分の一の価格に抑えて、住居を提供している。
 これらの施設を活用する当院の医師・看護師・職員は、昨今のIT化の進歩を合せて考える時、都市部において基本的な生活費の重い負担を負いながら働くよりも数倍効率の良い医療活動に従事できるであろう。これらの施設設備を実現可能にしているのも偏えに公設民営による小浜地区保健環境組合と特定医療法人三佼会宮崎病院の二人三脚が成し得る結果である。

【公立新小浜病院の公設民営方式】
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