自治体病院の再編は不可避に
読売新聞 2004年6 月24日
医師が足りない
自治体病院の再編は不可避に
住民の不満解消に明確な将来像示せ
地方の病院での医師不足を背景に、自治体病院再編の動きが本格化し始めた。
解説部:渡辺亮
人口10万人に対する医師数は全国平均で206.1人だが、東北6県は170~190人台。全国自治体病 院協議会が昨年、全国の自治体病院を対象に行った調査では、43%の病院が「医師が不足してい る」と答えた。
医師が都会に集中し、地方の医療現場が医師不足にあえぐ現象は今に始まったことではない。 今年四月からの臨床研修必修化を控えて、大学病院の中に、指導医を確保しようと派遣先病院か ら医師を引き揚げる動きも見られたため、この問題はさらに深刻化した。町村部にある小規模な 自治体病院ほど、医師確保に苦しんでいる。
医師不足対策として、避けて通れないのは、このような自治体病院の再編だ。
市町村が競い合うように病院を建て、ミニ総合病院があちこちにできた。その病院がそれぞれ、 地元大学病院に医師派遣を懇願し、限られた医師を奪い合う。大半は赤字経営で自治体財政を圧 迫。医師が広く薄く配置され、緊急事態に十分対応できない体制で、手術や分べんが行われるこ ともある。
このまま、自治体病院を維持するのはあまりにも効率が悪い。そこで、近隣地域内の病院間で 機能分担しようというのだ。
総務省は先月、検討会を設置し、今秋までに再編を進めるための手順を具体的に提示すること にしている。そんな中、モデルケースになるのではと期待されているのが、先行して取り組んでい る青森県の事例だ。
2002年12月、県が主導して、五所川原市など14市町村から成る地域での再編計画が策定された。 同市の病院を母体に中核病院を作り、他の町にある4病院は、入院設備のない診療所や、初期診療 と療養中心の病院にするというものだ。病床数は、地域内で228床の減になる。
身近な病院が縮小されるかわりに、中核病院の機能が高まるので、脳卒中、心筋こうそくなど の救急患者は、これまでのように1時間もかけて青森、弘前市まで搬送せずに、地域内で対応でき るようになる。小児科も、念願の24時間体制を目指す計画だ。
今後、14市町村で計画を具体化することになっているが、すべて順調なわけではない。
現在は112床の町立成人病センターが無床診療所になる予定の木造町では、住民が不満を募ら せている。同町は来年2月、周辺4村と合併し、つがる市となることが決まっており、「せっかく市 になるのに、病院が診療所になるのは納得いかない」というわけだ。福島弘芳町長は「医師確保も 経営も厳しいのは十分わかっているが、それでも、住民の声を大事にしたい」と話す。
このように、自治体病院の再編問題は「総論賛成、各論反対」に陥りやすい。全国自治体病院協 議会の小山田恵会長は「このままがんぱっても、医師が来なければ、医療を維持できなくなる。そ れより、中核病院で標準的な医療を受けられるようにした方がいいと、住民に理解を求めていく しかない」と話す。
住民の不安や不満は、再編後の地域医療の姿がはっきりしないことによるものだ。町内で手術 を受けられなくなるが、隣の市で今よりは高度な治療が可能になり、退院後の自宅療養は、地元 の公立診療所を拠点とした訪間看護が支える-。こんなふうに、プラスもマイナスも明確に示す べきだ。
住民にとって一番の関心は、医師不足や経営難といった運営上の問題ではなく、医療の質のレ ベルなのだから。