『救急車の有料化について』(長 隆)
救急車要請は有料化すべきである。医療が無料はない。経済弱者に配慮してもタクシー代わりを排除して、地域医療を断固守ることがほとんどの住民のためである。(長 隆)
「コンタクトレンズが外れない」。そんな女性の通報を受け、高松市消防局の救急係は女性宅に急行、病院に搬送した。しかし、タクシーでも行ける状況だったと指摘すると、「対応が悪い」と抗議されたという。
ほかにも擦り傷や虫さされ、歯痛、さらに検査のための通院など“タクシー代わり”に利用する通報が目立っており、救急車の出動件数はうなぎ上り。なかには▽夜間に病院への問い合わせが面倒▽待たずに受診できるとの思い込み―など、極端なモラルハザード(倫理観の欠 )
現在の日本の救急医療体制では、本人が自力で病院まで行けないような急患が発生した場合、救急車が要請され、最優先で治療を受けられることになっている。救急車は119番をかければ通常5?6分で到着し(山間ヘき地はもっとかかるが)費用はかからない。
ところがこの”救急車要請は無料である”ということにはいろいろ問題がひそんでいる。
そもそも急病人には二通りのタイプがある。
?救急車を呼ぶと近所にも迷惑がかかるし、はずかしいから無理をしてでも自分の力で病院までいく
?どうせただで来てくれるのだからちょっとした病気などでも遠慮なく救急車を呼ぼう
この?のタイプの人が問題なのである。実はどの地域にもこの?の極端なタイプの”こまったちゃん”がいて、救急隊の人が対応に苦労している。
ひどいのになると何も症状がないのにとにかく救急車を呼びつけるのが趣味のような人もいる。私が知っている例でも16日間連続して救急車を要請した女性がいた。この人は何も症状がないのに毎日救急車を要請し、病院へ搬送されてもすぐに帰される、というのを繰り返していた。(救急隊は基本的には搬送要請を拒否はできない)
これはやや特殊な例かもしれないが、実際?のタイプの人はかなりいる。救急車で病院に行けば待たなくてもいい、とか安易な理由が多い。こういった緊急でもないのに安易に救急車を利用する?のタイプの人のおかげで本当に緊急に救急車が必要な人にしわ寄せがいっている例もあるらしい。
こうした状況を見ると、やはりこの際、救急車は有料化すべきだと思う。一回の要請につき、だいたい五百円を徴収するのだ。千円では高すぎて?のタイプの人がますます救急車を呼ばなくなる恐れがあるし、百円程度では事務が煩雑化するだけで、?のタイプの人の抑止力にはほとんどならないだろう。だから五百円程度の自己負担がよい。
この程度の料金徴収であれば、国民の理解は得られると思う。救急搬送費用の一部を負担するというよりは、あくまでも不急不要な救急車要請への抑止力としての有料化である。
かつてある老人ホームでは光熱費がタダであったために入居者の電気のつけっぱなしなどが多くて困っていた。そこでごくわずかの一部負担金を徴収したところ、こうした無駄が激減したとのことである。またかつて美濃部東京都知事が老人医療費を無料化したら病院がお年よりのサロンと化したことがあった。そのために本当に医療が必要な人が順番待ちなどで不利を被った。「あら、あのおじいさん、今日は病院お休みねえ、どこかお悪いのかしら」などというブラックジョークなどもはやったものだ。
人間にはタダならば自分の都合のいいように徹底的に利用してやろう、といういやしい根性が誰にでもある。それは結局資源の無駄遣いにつながり、その資源を本当に必要としている人にとっては迷惑この上ないものとなる。
救急車も例外ではない。救急隊員も救急車の数も無限ではない。限られたこうした医療資源を有効利用するためにはその有料化は必須である。それにより不急不要な救急搬送要請が減少し、より効率的な救急車の運用が可能になると思われる。