『マイケル・ムーア監督の最新作『シッコ』(SiCKO)を観ました・・医療経営財務協会がハーバードの李先生をお招きし「アメリカ医療の光と影」を講演していただきましたが公立病院大改革の前夜に改めて病んでいるアメリカの医療制度・・経済最優先・・を断固拒否すべきであると痛感しました』(長隆)
以下 上映館で配られていた映画案内・書き込みブログなどからの引用です。
医療保険未加入者が約5,000万人に達し、また保険に加入しているにもかかわらず、あらゆる手段を講じて保険金の支払いを拒否することによって空前の利益を上げる営利主義一辺倒の医療保険会社や製薬会社と、それに癒着した政治家という構造の、アメリカの医療制度の問題を取り上げ、事実上、崩壊に瀕している状況への批判を展開する。
マイケル・ムーアの突撃取材が暴く米国のイカれた医療事情
米国社会に問題提起を続けているマイケル・ムーア監督の最新作『シッコ』(SiCKO)は、米国の医療保険制度に切り込んだ作品だ。
"sicko"とは"病気"とか"感染者"という意味です。
アメリカは先進国で唯一、国民皆保険のない国。健康保険は公共サービスではなく、おもに民間の保険会社が受け持っている。、国民の2割以上5000万人は無保険者と言われている。
このドキュメンタリー映画の主題は無保険者の話ではなく、普通に収入を得て保険に入っている人たちの話である。
日本でも生命保険の未払いが大問題になっているけど、米国の保険会社は、とにかく考えつく限りの理由をつけて医療費を支払わない。
映画の冒頭、交通事故を起こして意識不明のまま救急車で運ばれたことのある女性が登場する。
「事前に救急車を使うことを申告してなかったから、救急車の搬送費は保険でおりなかったの」
米国では、意識がなかろうが死にかけていようが、救急車を呼ぶ前にまず保険会社に電話しなくてはいけないそうだ。
作業中に指を切断してしまった工場労働者に示された医者の言葉を表わしたもの。「治療費は薬指は12,000ドル、中指なら60,000ドルだ。どうする?」――この工員は安い方を選ぶだけで精一杯だった
ムーアの取材はさらに海外に及ぶ。まずはお隣のカナダ。
国境をひとつ越えるだけで、医療費無料の世界が待っている。次に訪れたのはイギリスだ。
ここでも、国民はいつでも無料であらゆる治療を受けることができる。病院のキャッシャー(支払所)探し求めるムーアは、裏口の脇にようやく窓口を見つけるが、それは治療費を支払う所ではなく、病院に来るまでにかかった交通費の払い戻しを受ける窓口だった。
そしてフランス。ここでは、病気で入院したときの休業補償費まで受けとることができることを知る。ムーアは行く先々で問いかける。「ハウマッチ? ?いくらかかった?」。みんな当たり前だろ? といった笑みを浮かべ、一様に答える「ゼロだ」。
もちろんこれらの国々の医療制度にも問題はある。
カナダは医師不足が深刻で、病院では慢性的に長時間待たされるし、イギリスもフランスも医療財政は火の車だ。
しかしそれでも、アメリカのような悲惨な目に遭う人はいない。ムーアの映画を「一方的で、自分の主張に不都合な部分をわざと取り上げていない」と貶す評論があるが、それは世の中の報道すべてにあてはまる。アメリカの多くの報道が、ムーアとは視点が逆なだけなのである。
最後はあの9.11にからめる形で取材が進む。
9.11テロのとき、事件の起きたグラウンド・ゼロにはボランティアで多数の救護士が駆けつけた。
彼らの多くは粉塵の中で救護活動を続けた結果、深刻な呼吸器障害を煩い、職を失い、政府の援助ももらえないまま暮らしている。
一方、テロ事件を起こした犯人グループは、キューバにあるグアンタナモ基地に収監され、万全の医療体制に守られていた。ムーアは元救護士たちを連れ、キューバに乗り込む。基地に向かって拡声器で叫ぶムーア。「この人たちに、中の囚人と同じ医療を受けさせてください!」
キューバでの撮影が、事前の渡航許可を米政府から得ていなかったとして米財務省による調査が入った。その後、不法入国の容疑をかけて上映中止をチラつかせた。
この映画で初めて知ったのだが、キューバはラテンアメリカで最も医療制度が進んだ国だそうで、もちろん全国民が無料で診療を受けることができる。
キューバの病院は、グアンタナモで門前払いを食ったムーアたちを受け入れ、「9.11の英雄」として手厚く治療する。
このあたり、キューバ政府の意図を感じないではないが、アメリカが見放した患者をキューバが診てくれたのは事実。保険会社から多額の寄付をもらい、「国民皆保険は社会主義の始まりだ」とアジって導入を阻む米国の政治家たちは、バリバリの社会主義国家かつアメリカの敵、キューバの態度を見て何と言うのか?
医療保険未加入者が約5,000万人に達し、また保険に加入しているにもかかわらず、あらゆる手段を講じて保険金の支払いを拒否することによって空前の利益を上げる営利主義一辺倒の医療保険会社や製薬会社と、それに癒着した政治家という構造の、アメリカの医療制度の問題を取り上げ、事実上、崩壊に瀕している状況への批判を展開する。自由診療を基本とする現行の制度から、政府からの支出・政府による保険のみに一元化した公的医療 (universal health care) へと転換することが主張の根幹である。アメリカではかつて民主党のヒラリー・クリントン議員がファースト・レディとしての立場(当時)から公的医療制度の整備を求め、議会の反対により頓挫したことがある。
劇中ではアメリカの「悪い医療」に対して、イギリス、フランス、カナダ、キューバなどの医療を「良い医療」として対比させる。アメリカの医療制度を徹底的に批判するスタンスでまとめている一方で、対照とされる医療制度の欠点、例えばフランスにおける非常に高い税金や、イギリスにおいて資金削減により病院の倒産や医師の出国が相次いでいることなどを軽視しているという側面もあり、客観性に疑問を示す声もあるが、これまで大っぴらに触れられることの少なかった米国医療の暗部を赤裸々に描き出すことに成功している。
2007年のカンヌ国際映画祭では特別招待上映された。撮影のため米国政府に申請の上キューバを訪問したが、米国財務省が同申請書の渡航目的記載に問題があるとして調査し、カンヌでの上映直前に同省から通告書を受け取ったことを記者会見の席で明らかにしていた。 ムーアはこれをブッシュ政権の妨害行為と断じ、フィルムを没収されないように、カナダに隠したとも言及した。
映画公開後は、ドキュメンタリー史上第二位の動員を得、これは同時期に公開された「ダイハード4」を上回る数字であったこともあり、公開直後に200館での拡大上映が決定しただけではなく、次期アメリカ大統領選候補者も、健康保険制度を争点にしはじめるなどの反響を生んでいる。