2008.05.07

『ガイドライン 一部事務組合方式による場合には、構成団体間の意見集約と事業体としての意思決定を迅速・的確に行うための体制整備に特に留意する必要がある』

一部事務組合方式による場合には、構成団体間の意見集約と事業体としての意思決定を迅速・的確に行うための体制整備に特に留意する必要がある。更に現在一部事務組合方式により設置されている病院で、構成団体間の意見集約と事業体としての意思決定の迅速・的確性の確保に課題を有している場合には、地方独立行政法人方式への移行について積極的に検討すべきである。・・・として見直しと経営主体の変更求めている理由。

(以下 解説)

一部事務組合に係る規定

一部事務組合は、単独の自治体では実施が困難又は効率的でない事業について、複数の自治体で共同処理するため、自治体の協議により規約を定め、(自治法287)関係自治体の議会の議決を経て(自治法§290)、市町村を構成団体とする組合は知事の許可(自治法284)を得て設立され、事業内容が確定してくる。

一部事務組合は、自治体の事務の一部を共同処理する機関であることから、その事業に要する経費を支弁するための財源は、当該事業による料金等の収入等のほか構成団体の負担金により賄っている。

この財源措置を明確化するため、それぞれ一部事務組合では負担金条例により事業に要する経費の負担割合を定めており、年度ごとに予算のなかで負担額を明らかにし、組合議会の議決を得て構成団体に経費分賦を通知している。
事業の執行に当たっては、原則として市が加入し都道府県が加入しない一部事務組合は、市に関する規定が準用される。(自治法§292)
また、組合議会は条例の制定、改廃、予算、決算認定、使用料手数料の規定、契約締結等の事件を議決する(自治法§96)こととされている。

運営の実態

単独自治体と一部事務組合の大きな違いは、トップが一人か、複数以上か、という点にある。
単独自治体ではトップ一人が政策決定の最終責任者であるが、一部事務組合では構成団体の首長それぞれが意思決定に加わることになり、首長間で意見調整が長引くとそれだけ意思決定は遅れる。

事務を共同処理する一部事務組合は、構成団体の考えが同一方向でないと円滑な運営はできず、構成市町村の首長自身の政治的な思惑、構成団体の住民の意向を背景としたエゴがぶつかり合うと構成団体間での意見調整に長時間を要することとになり、地域全体の利益を損なう結果になる。

一部事務組合は、単独自治体では実施困難又は非効率な事務を共同処理するための機関として存在意義は十分あるものの、構成団体の間の対立を調整する仕組みは不十分と思われる。事実、市町村合併により一部事務組合の構成団体数が変化し、これに伴い市町村負担金の負担割合を改定する際は、市町村の間の意見調整に手間取った挙句、経過措置や激変緩和措置など様々な措置を講じて合意形成しているのが実態。

重要案件は組合議会で議論されるが、組合議会の構成員は、構成団体の首長及び議会選出議員(場合によっては構成団体の議会議長の充て職で、組合議員の期間も短い)であり、市町村間の対立があるときはそのまま対立構造が組合議会に持ち込まれるおそれがある。
組合議会は市町村議会同様、多数決原理が採用されるが、共同処理する機関として、その費用負担を構成団体に依拠している一部事務組合では全会一致を目指し、管理者、幹部職員は市町村の意見調整が時間と労力を費やす。(全会一致でなければ事業は事実上できない)

また、一部事務組合の条例、予算等の重要案件は構成団体にも事前通知され、特に予算については、構成団体の予算と連動しており議会の審査対象となってくる。

そうした意味から一部事務組合の事業は、組合議会のほか構成団体の議会のチェックを受けることになる。地方財政が厳しさを増す中で組合予算は、組合の財政当局及び管理者、構成団体の財政部門、一部事務組合と構成団体の議会といった多段階のチェックを経て成立する。多段階のチェックは審議が尽くされるともいえるが、スピードが求められる公営企業では時期を失することも出てくる。

公営企業を経営する一部事務組合においては、構成団体間で協議が整わない場合は、構成団体の申し出により知事等が必要な斡旋若しくは調停、又は勧告をすることができるとする規定(地公企法41)があるが実例は少ないと思われる。

病院事業を運営する一部事務組合の問題点

(1)当事者の病院事業への視座

一部事務組合は市町村の寄り合い所帯であり、それぞれの構成団体の意向が強く働き、広域的な視点に立った事業展開は「総論賛成、各論反対」になり勝ちである。
一部事務組合の自治体病院にあっても、管理者自身は首長という立場もあり、ややもすると地域全体の利益よりも自らの出身団体の利益を優先させる傾向がある。
これをチェックするのは組合議会しかないが、所詮は組合議会議員も出身自治体の動向に左右され、広域的観点からの意見調整ができない。
組合管理者(首長)が広域の病院という意識を強く持ち、むしろ出身自治体の意向(特に市町村議会)を抑制していかなければ構成団体の一致協力は得られない。
一部事務組合で病院事業単独の企業団では病院事業管理者を置かず、その権限は企業長が行うこととされており(地公企法§39の2)、企業長は構成団体の長が共同して任命することとなっているため、自治体と病院事業管理者は分離できることから、首長が管理者となる弊害を回避する一つの手段といえる。

(2)市町村間の意見調整

構成団体のベクトルが一致しないと既存事業であっても円滑な遂行は期待できない。共同処理すべき事務と位置付けられても、首長が選挙により交替すると場合によっては事務が停滞する。
自治法では一部事務組合の経費分賦について異議申出を認め、申し出があったとき管理者は組合議会に諮って決定する規定があるのみで、市町村間で意見が異なる場合、当事者間の調整に任せ調停の仕組みがないことが問題を長期化させているのではないかと思われる。
病院においても、仮に組合管理者と病院長が経営改善の施策が一致していても構成団体の理解が得られないと有効な手を打てない。

(3)意思決定のスピード

一部事務組合は、いくつかの自治体で構成され構成団体との意見調整によって事務が進められており、この多段階のシステムが意思決定を遅らせており、現に、看護師配置基準の改定により1.4:1が制度化された際、病院の職員定数規定などが支障となって自治体病院は出遅れたといわれている。

医療制度が大きく変わろうとしている中、自治体病院が民間病院並みの意思決定のスピードを持つには、公営企業法の全適であっても病院事業管理者に人事権、予算編成権など経営に必要な実質的決定権限を委ねるか、指定管理者又は地方独立行政法人・非公務員型で運営することが適当ではないかと考える。

公営企業法の全適では事実上、首長の関与を拒むことは難しいとの指摘もあり、首長と病院事業管理者との信頼関係がなければ、意思決定も遅くなり経営改革もできないと思われる。

(4)その他
小規模の一部事務組合では、職員数も少なく日常業務に追われ研修等への参加機会が制約されスキルアップもできない。また、そこに構成団体とのローテーション人事が加わると組織としての知識・経験が蓄積されない。また、決裁権をもつ幹部職員がローテーション人事で派遣され出身自治体の意向が反映されてしまうという弊害も生じやすい。

公営企業全般にいえることでもあるが、構成団体の財政サイドでは、複式簿記になじみが薄く、特に病院事業にあっては業務の複雑さも手伝ってチェック機能が十分働かない。
 
構成団体の財政力の差から、繰出金が認められている事業についても繰出金の負担能力の関係から財政力の低い団体に合わせるようになり、不採算事業が制約されることが考えられる。