2005.09.26
診療科目別経営 第1回
MedicalManagement 2005年7月号
診療科目別経営 第1回 精神科 齋藤功
□医療法人(精神科)の重加算税を考える
精神科を標榜する医療法人において、税務調査で重加算税の対象となる基準のうち、『簿外資金による費用の支出』と決定される可能性ついて考えてみます。
『簿外資金による費用の支出』とは、『簿外資金(確定した決算の基礎となった帳簿に計上していない収入金又は当該帳簿に費用を過大若しくは架空に計上することにより当該帳簿から除外した資金をいう。)をもって役員賞与その他の費用を支出していること。』(平成12年国税庁公表・賦課基準)とあります。つまり、収入を医療法人の収益に計上せずに、そのお金を使って費用を支払うこと(簿外取引)です。
医療法人は、経理ミス・申告ミスによる申告もれ所得が多い業種と言われており、またその一方で、故意に仮装隠蔽にすることによる脱税は比較的少ない業種とされてきました。従って、医療法人では、帳簿の改ざんなどによる脱税という意識は特になかったものの、経理ミス・申告ミスにより『簿外資金による支出の計上』に当たるとされた結果、重加算税が賦課されてしまう例が増えてきたように思われます。
□精神科における事例検証
1精神作業療法士による実習生受け入れ
精神作業療法士のいる医療法人は、リハビリ系の専門学校から実習生の受け入れをすることがあります。その際、専門学校から施設利用料や謝礼金を受け取りますが、謝礼金部分について、専門学校から直接作業療法士に支払っていることがあります。専門学校としては実習生を受け入れてもらう手前、このような支払をすることがあるそうです。しかし実際には、医療法人の施設を使用して実習を行っている以上、謝礼金という名目には関係なく、医療法人の事業に伴う収入として、医療法人の収益とする必要があります。作業療法士に手当を支給するかどうかは、その後の話として医療法人が判断することになります。
『簿外資産による費用の支出』に該当するかどうかの判断ですが、まず作業療法士に普段支給している部分の給与については、これは実習にかかわらず定期的に支払われる費用であるため、該当しないと考えられます。しかし、講習時の教材代や講習手当については、謝礼金という簿外資産をもって、教材代や給与という費用を支払ったので該当するでしょう。
2患者が耕作した作物等の販売収入
精神科では、作業療法の一環として、農作物や編み物・工芸などを作ることがあります。その製品等を販売し、それによって得た収入を医療法人の収益に計上していなかった場合はどうでしょうか。耕作代・材料費や手当てを支出していた場合には、次回の耕作代や材料代に消費されるなどして、患者の方に還元されていたとしても『簿外資産による費用の支出』に該当すると考えられます。さらにその支払いを医療法人の経費に計上している場合には、故意であると判断される可能性が非常に高くなります。これについては1でも同様のことが言えます。
□その他医業外収入項目との関連と対策
その他医業外収入とは、公衆電話手数料・自販機手数料・駐車場収入・患者外給食収入などで、その他多数ありますが、リベート収入など、直接現金による収入の多い項目として有名です。それだけに収入の計上もれも起こりやすく、特に注意を払う必要があります。
ここで、『医療法人の収入に計上する』という内容の確認ですが、総務課が現金収入や振込みから、販売集計表を作成し、その後伝票を起票して、帳簿に記入するといった一連の流れになります。従って、裏を返すと総務課が把握していない事項については簿外資産となりますので、特にその他医業外収入の管理については、総務課などが年1回程度点検するのが望ましいあり方でしょう。
また、賦課基準では他にも『帳簿書類の記録等をしないで、売上げや棚卸資産の除外するといった行為』も対象になるとされていますが、その行為だけでは、医療法人の性格上、故意であるという判断が難しいので、説明する余地があるのに対し、逆に『簿外資金による費用の支出』では、特定の人に支払がなされたり、費用の支払が医療法人の経費に計上されたりしますので、故意ではないという説明がしづらくなります。
□重加算税とは何か
重加算税は、具体的には通常、不足していた税額の35%が課され、また、期限後申告や無申告であった場合には不足していた税額の40%が課されます。重加算税に限らず加算税には行政上の制裁的な性格がありますが、あくまで税金ですので払ってしまえば終わりと簡単に考えられがちですが、そう単純なものではありません。
税務調査が任意調査から査察部の強制調査に切り替わり、法人税法違反等として検察庁に立件されれば、金額の大きさにもよりますが、医道審議会で処分が検討され、医師免許の取消・停止の問題が出てきます。
また、特定や特別医療法人の承認を受けている医療法人の場合には、承認要件の中にある『法令違反その他公益に反する事実がないこと』に違反することから承認の取消の問題が出てきます。いったん取消となると、その後3年間は新たに申請することはできません。
これに限らず、銀行などの対外的な心証も配慮すると避けるべきであるといえます。
いったん賦課決定を受けた後においても処分があったことを知った日(処分に係る通知を受けた場合には、その受けた日)の翌日から起算して2月以内ならば不服申立て(国税通則法第77条第1項)が認められていますので、積極的に活用すべきであると思います。

