2005.06.11
「医療法人制度改革への基本的な方向性」への提言1
「医療法人制度改革への基本的な方向性」への提言1/東日本税理士法人 会計士補 長 英一郎 JapanMedicine 2005年6月11日
短期連載(全5回)「医療法人制度改革の基本的な方向性」への提言
平成17年4月に厚生労働省医政局指導課より「医療法人制度改革に関するご意見の募集について」が公表された。
同課では、将来の医療法人制度について、(A)非営利性を徹底した新しい医療法人制度と(B)更に公益性を求めた新たな医療法人制度(認定医療法人制度)との二つの観点から考え方を整理している。「医療法人制度改革に関する意見の募集について」は、より広く国民からも意見を求めるものであり、筆者も5月13日付で同課に意見を提出した。
本連載は、提出した意見のうち重要テーマを抽出し加筆修正を加えたものである。
第一回 剰余金の使途の明確化
◆厚生労働省の意見◆
○剰余金の使途については、?剰余金の使途に関する理念規定、?剰余金に不適切な費用負担の禁止規定を医療法に明確に規定することによって、医療法人の非営利性をより鮮明にするとともに、剰余金はすべて医療に再投資する
◆筆者の見解◆
剰余金の使途の明確化という理念は理解できるが、剰余金は会計上貸方科目であるので、剰余金を医療に再投資させることによる仕訳は不可能である。
仮に、剰余金を医療機械に充てた場合に仕訳を行うとすると図1の仕訳になるが、この仕訳によると医療機械が売却されたことになってしまう。医療の再投資について仕訳が可能にするためには、学校法人会計を参考に図2の仕訳を行い、第2号基本金の取り崩しは医療法人の量的規模の縮減に限り認めるという方法が考えられる。しかし、基本金は会計的概念に過ぎず、基本金の繰入により現実に資金が留保されるわけではない。また、厚生労働省も「剰余金の使途に関する理念を定めるに当たっては、従来からの効率的な医療法人の経営を硬直的なものにしないように配慮するものとする。」としている。基本金の取り崩し規制により医療法人の弾力的な経営を阻害するおそれがあるので、基本金会計の導入は非現実的である。
そこで、「剰余金」という文言ではなく、キャッシュフロー計算書で用いられる「フリーキャッシュフロー」という文言を用いてはどうだろうか。「フリーキャッシュフロー」とは、平成16年8月改正の病院会計準則で追加されたキャッシュフロー計算書の「業務活動によるキャッシュフロー」から業務活動に必要な設備投資額を差し引いたものであり、業務活動を継続した上で自由に使えるキャッシュのことをいう。
「フリーキャッシュフロー」という文言であれば、仕訳が可能になる。上記の例では、仕訳は「(借方)医療機械×××(貸方)現金預金×××」で足りることになる。「フリーキャッシュフロー」が、医療に再投資されたか否かについては内部統制の整備、外部監査の導入によりチェックすることができると思われる。
図1 剰余金を医療機械に充てた場合の仕訳(現行の病院会計準則に準拠した場合)
(借方)医療機械 ××× (貸方)現金預金 ×××
(借方)剰余金 ××× (貸方)医療機械 ×××
図2 剰余金を医療機械に充てた場合の仕訳(基本金会計を導入した場合)
(借方)医療機械 ××× (貸方)現金預金 ×××
(借方)剰余金 ××× (貸方)第2号基本金 ×××
参考文献
長 英一郎:認定医療法人の概要と今後の課題、日本医事新報社、「日本醫事新報」2005.3
【執筆/東日本税理士法人 長 英一郎】

