2005.06.13
「医療法人制度改革への基本的な方向性」への提言2
「医療法人制度改革への基本的な方向性」への提言2/東日本税理士法人 会計士補 長 英一郎 JapanMedicine 2005年6月13日
短期連載(全5回)「医療法人制度改革の基本的な方向性」への提言
前回に引き続き、「医療法人制度改革に関するご意見の募集について」への提言をしたい。
第二回 監査の目的を明確にすべき
◆厚生労働省の意見◆
○認定医療法人(仮称)については、地域で安定的な医業経営を実現するために公認会計士等の財務監査を受けなければならないものとする。
◆筆者の見解◆
地域で安定的な医業経営を実現のために財務監査を受けなければいけないものとしているが、監査の目的が不明確である。監査の目的を明確にしなければ、ともすれば公認会計士等の職域拡大につながるのではないかとの批判を受け、認定医療法人の目指す目的が矮小化されかねない。主たる監査の目的として、以下のようなものを挙げてはいかがであろうか。
1 内部管理のサポート
医療法人の内部統制の有効性を確かめることにより独善的経営を排し、医療法人等を保護する。国から税制上の優遇措置を受ける認定医療法人は当然安定的経営が求められる。経営者は、自らの権限と責任において健全な内部管理、内部統制組織の維持管理が必要とされる。外部監査は内部管理等をサポートし私的経営を排除するために実施されるものである。
2 継続企業の前提についての意見表明
継続企業の前提に基づき財務諸表を作成することが適切であるか否かを検討することにより安定的な医業経営を実現し、債権者等を保護する。継続企業の前提とは、企業が将来にわたって事業活動を継続するとの前提をいう。監査人は、理事長が実施した合理的な期間にわたる医療法人の継続の前提に関する評価について、その期間のうち少なくとも貸借対照表日の翌日から一年間を対象期間として検討する。財務諸表監査により継続企業の前提について意見表明されれば、医療法人が一定期間存続することが期待され、債権者・地域住民が保護される。
3 財務諸表の適正性確保
財務諸表が一般に公正妥当と認められる会計基準に準拠して適正に表示されているか否かを意見表明することにより、公募債を購入する投資家の信頼性が確保する。財務諸表の適正性確保により、財務格付けが向上し、資金調達コストが節減される。
4 公益性の向上
特殊関係者に対する利益供与の有無等を確かめることにより私的経営が排除され、医療法人職員の士気が向上する。
5 自治体病院の受け皿となることの前提
認定医療法人は、地域住民に支持される存在が期待されている。不効率経営の自治体病院の受け皿に認定医療法人がなる場合には、公立病院と同様の運営と透明性が当然求められる。
6 税理士法第33条の2書面の普及
税理士法第33条の2において、納税義務の適正な実現を図るため、書面添付制度が規定されているが、広く普及していない。書面添付制度では未監査の財務諸表を基に税理士が申告書に意見を表明することが一つの原因になっている。財務諸表に監査人が意見表明をすれば、税理士が書面添付制度を活用し、正確な申告書が作成されることが期待される。納税者側の医療法人にとっても、税務調査による予期せぬ課税を回避することが可能になる。
参考文献
長 英一郎:認定医療法人の概要と今後の課題、日本医事新報社、「日本醫事新報」2005.3
【執筆/東日本税理士法人 長 英一郎】

