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2005.04.21

医療法人の設立における諸問題 税理士・安松奈穂

医療法人の設立における諸問題
東日本税理士法人  税理士 安松 奈穂
ぎょうせい 月刊 税理 2005年5月号掲載

■医療法人とは
  医療法人とは、医療法の規定に基づき、病院、医師もしくは歯科医師が常時勤務する診療所又は老人保健施設を開設しようとする社団又は財団で、都道府県知事の認可を受けて設立される特別法人である。
  医療法人には、社団医療法人と財団医療法人があり、さらに社団医療法人は持分の定めのあるものとないものに分かれる。現在設立されている医療法人のほとんどは持分の定めのある社団医療法人となっている。社団医療法人の運営は、最高意思決定機関としての社員総会、執行機関としての理事会、監査機関としての監事によって行われる。株式会社との違いをまとめると図表1のようになる。

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■医療法人の設立スケジュール
  医療法人の設立申請はいつでも行えるわけではなく、自治体によって申請時期が決められている。スケジュールは図表2のようなパターンが多く、仮申請から設立認可書の交付まで通常5ヶ月くらいはかかり、仮申請前の申請書の準備と認可書交付後に登記が完了するまでそれぞれ1ヶ月くらいかかるため、それを念頭に置きながら申請時期を検討しなければならない。

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■医療法人の役員と一人医師医療法人
  医療法人は、医療法の規定により原則として理事3名以上及び監事1名以上の役員を置かなければならない。なお、医師又は歯科医師が常時1名又は2名勤務する診療所を1ヵ所のみ開設する医療法人の場合には、都道府県の認可を受ければ、理事は1名または2名でもよいとされている。ただし、この場合、社員は3名以上としなければならない。これが、いわゆる一人医師医療法人といわれるものである。一人医師医療法人と通常の医療法人の違いは前述の事項以外はほとんどない。 役員には欠格事項(医療法46条の2第2項)があり、成年被後見人または被保佐人などは役員になれないが、当該医療法人と取引関係のある営利企業の役員などは実質的に認めないとしている自治体もある。
  理事長は原則として医師又は歯科医師である理事の中から選出することとなっているが、合理的な理由があればそれ以外の者が理事長となることも可能である。
  また、医療法人の開設するすべての病院、診療所又は老人保健施設の管理者に関しては必ず理事に加えなければならない。ただし、社員に加える必要はない。
  監事については、理事や当該医療法人の職員は就任できないが、それ以外にも当該医療法人と利害関係がある者や他の役員と親族等の特殊の関係がある者は就任できないとされている。自治体によっては、顧問税理士等もこの利害関係者にあたるとしているところもある。

■医療法人への出資
 社団医療法人は、社員が出資することによって運営をしていくというのが原則である。出資に関しては、誰が出資できるのか、出資しなければならないのか、また、いくら出資すべきなのかという問題が出てくる。
  誰が出資できるかという点に関しては、基本的には誰でも出資できることになっている。なぜならば、株式会社と違い出資したからといって経営に参画できるわけではなく、あくまでも業務を遂行するのは社員だからである。よって社員でない者や営利法人であっても出資することは可能である。ただし、営利法人は出資したとしても社員として社員総会における議決権を取得することや、役員として医療法人の経営に参画することはできない。
  また事前審査の際、社員全員が出資するようにという指導を受ける場合があり、院長以外の社員が形式上の少額な出資をしてしまうことがあるようだが、このような形式的な出資は将来的に大きな問題を起こす原因ともなりうる。なぜなら医療法人は配当が禁止されていることから、含み益が膨大になることが考えられる。出資比率が数%であったとしても、将来的にその社員が退社する場合、出資持分に応じた多額の払戻しを請求できることとなり、税務上の問題やキャッシュフローの面での問題が予想されるからである。
  医療法人の出資で特徴的なのは、原則が現物出資となることである。これは医療法人が設立当初から業務を行うのに必要な資産を有していなければならないことに起因する。ただし、土地などは出資により多額の含み益が実現することが予想されるため、出資せずに賃貸とすることが多い。賃貸料の算定が適正に行われており、賃貸契約期間が長期間にわたるもので、かつ、確実なものである場合には出資しなくてもよい。
  出資金額については、最低出資額の規定は特にないが、事前審査では「運転資金の2か月分」の現預金等(医業未収金を含む。)を出資するよう指導される。これは昭和61年6月26日付け健康政策局長通知に起因するものだが、なぜ運転資金の2か月分かというと、通常社保や国保の保険請求分は2か月遅れで入金されるため、収入のほとんどが2ヵ月後にならないと入金されないからである。

■モデル定款について
 医療法人の定款は、厚生労働省が定めたモデル定款に準じて作成される。社団医療法人のモデル定款については、このとおりに作成すれば医療法上も税法上も問題が発生することはないが、特別な事情がある場合には、必要に応じてモデル定款を変更しなければならない。このようにモデル定款の内容を変更しようとすると、事前審査で「モデル定款の内容と相違するので認められない」という指摘を受けることがある。
  しかしながら、平成16年8月13日付け厚生労働省医政局長通知では「モデル定款はあくまでモデルを示したものであり、医療法人の定款は基本的には医療法人内部で所定の手続きに従い、制定、改廃するものであることから、医療法人の監督における定款の認可に当たりモデル定款から一切の逸脱を認めないといった硬直的な運用は、これを設けた本来の趣旨に照らし適当でない」とされており、定款は医療法に違反しない限り自由に決めてよいものなのである。
  一方、同通知で「出資額限度法人」のモデル定款も発表された。出資額限度法人とは、社員の退社時における出資持分払戻請求金額や解散時における残余財産分配請求権を払込出資額に限定するということを定款において明らかにした法人で、医療の永続性・継続性を確保する目的で定められたものである。これについて、厚生労働省による国税庁への事前照会に対する回答では、同族出資割合、同族社員割合、理事等の同族割合、理事等への特別な利益供与の4要件を満たさない限り、みなし贈与が生ずることが明らかにされている。
  しかしながら、厚生労働省が発表した出資額限度法人のモデル定款にはこれらの要件が担保されておらず、このままではみなし贈与課税が生じることになってしまう。(社)日本医療法人協会が独自のモデル定款を作成しているが、こちらは4要件を満たしたかたちになっているため、設立時から出資額限度法人を考えている場合は、こちらを採用して課税関係を担保しておいたほうが賢明である。

■開業と同時に医療法人になれるか
 医療法人になるとさまざまなメリットがあるが、開業当初から相当の収益が見込まれる場合、金融機関等からの借入れを考えている場合には、開業と同時に医療法人を設立した方が有利であると考えられる。
  しかし、事前審査では一定の経営実績を求められるケースもあり、経営実績がないと申請を受け付けないとしている自治体もある。一定の経営実績を求めるのは、医療法人が経営不振により解散せざるを得なくなるような事態が生じたときに、認可した自治体側にも責任が生じてくるのを恐れているからではないかと思われるが、医療法は一定の経営実績があることを設立の要件とはしていない。さらに、昭和61年6月26日付け健康政策局長通知では「医療法人の設立を認可するに当たって、一定の期間の医療施設の経営実績を要件とすることは望ましくない」とされており、一定の経営実績がないからといって設立認可申請を受け付けないということはこれに反することになり、行政手続条例等に違反する可能性がある。
  開業と同時に医療法人を設立する場合には、設立2年間の予算書とその根拠資料、建物等の賃貸契約書の案など、確実に開業でき、かつ、将来的に安定した経営ができるということを立証するような資料の添付が必要となる。また、先に述べたとおり仮申請から法人設立登記まで半年くらい要するため、申請時期をいつにしたらよいのかを検討する必要があるだろう。

参考文献
  東日本税理士法人編,安松奈穂『医療法人設立なるほどQ&A』(中央経済社)
                                〔執筆/税理士 安松 奈穂〕